ryosuke

魔術師のryosukeのレビュー・感想・評価

魔術師(1958年製作の映画)
3.8
うーん...なんじゃこりゃ感は否めないけど見応えがない訳ではないという感じ。全体的にイマイチ何がやりたいのかは分からない。
とにかく何かが起こりそうな雰囲気だけが持続し、最初と最後意外は一つの屋敷の中で物語が展開される。舞台が変わらない閉塞感と何かが起こりそうで結局何も起こらない肩透かし感で割と退屈するのだが、ベルイマン作品の中でもかなり暗く陰影のくっきりした画は魅力的なので見てはいられる。
超常的な力があるのか全てトリックなのかは医師を部屋で驚かすシーンまで延々と宙吊りにされ、確定しない。このシーンはベルイマンとしては珍しいかなりはっきりしたホラー演出に移行するのだが、流石というべきか魅力的に仕上げてある。
ただ老婆の予言が当たったりしている部分は釈然としないが...きっちり真相が確定する映画という訳でもないのかな。
警察所長がヅラ丸出し過ぎて困惑していたが、ちゃんとカツラを被っているという設定だったので安心した。
マックス・フォン・シドーはひたすら無言で異様な雰囲気を漂わせる怪演。急に喋りはじめてびっくり。役人との交渉役の男も芝居がかった慇懃無礼な言動が良い味を出している。
ラストは「道化師の夜」のように人々からコケにされ、賤業として扱われる芸人の悲哀みたいな感じで収束させるのかと思いきや、よく分からないハッピーエンド?が訪れてポカーンとさせられる。ラストカットは馬車が通り過ぎた後に音楽が消え、無音の中で街灯が揺れる音が響き、なかなか終幕しない。お、もう一発なんかあるのか?と思いきや再び音楽が流れて終了。最後まで何か起こりそう感だけを引っ張る。ベルイマンにからかわれてるのか?
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