けんたろう

魔術師のけんたろうのレビュー・感想・評価

魔術師(1958年製作の映画)
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インチキ野郎とインテリ💩野郎のおはなし。


マックス・フォン・シドーの悲しみや怒りが籠った演技が見事だった。台詞は無く、一方向に力の入ったその表現は全く素晴らしいの一言に尽きる。
だがあまりにも素晴らしすぎて、二転三転とくるくる回る物語にはそぐわないように思えた。
それが起因してか、急な結末も惨々なものだった。他力本願が過ぎて本当につまらなく、また余りにも呆気なくて心の置き所がない。

さらに"対比"という面でも、同監督の『第七の封印』『仮面/ペルソナ』などを観た上では甘く感じた。少なくとも、大きく印象に残るようなものは今作にはなかったと思う。


しかし若いカップルや年寄りなカップル、落ちぶれた役者などの面白い役どころはあり、彼らが織りなすラブ&コメディは確かに楽しかった。シドーだけが本作の見所と言うのはきっと過言だろう。

だがそれでも、ヴェネツィアで賞を取った"傑作喜劇"とはとても思えなかった。まぁここまで作品を悪くばかり言ってきたが、人の感性はそれぞれということでお許し願おう。おわり。