もとまち

野獣死すべし 復讐のメカニックのもとまちのレビュー・感想・評価

4.2
ただただ歪な映画。復讐譚でありながらまるで体温が感じられない。日常的な業務をこなすかのように、淡々とメカニカルな殺戮を繰り返す藤岡弘。彼はとにかく人を殺す。ターゲットとなる人物はもちろん、復讐に協力した人間も平然と始末していく。どう考えてもやり過ぎだし、相手も為す術もなく殺されていくだけ。ゆえに復讐の達成感とか爽快感とかはまるで存在しない。というか、復讐の動機となるエピソードもほとんど描かれないため、観客は藤岡弘に全く感情移入出来ないのである。彼は己を「悪霊」と表現する通り、既に人間を超越してしまった存在だ。カメラはそんな超人の無慈悲な殺人をひたすら捉え続ける。復讐モノとして完全に破綻しているが、見世物バイオレンス映画の極限として見れば実に面白い。昏く危険な魅力の一作。
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