tjZero

彼岸花のtjZeroのレビュー・感想・評価

彼岸花(1958年製作の映画)
4.0
小津安二郎監督作を好む人は、今回はどんなお話を語ってくれるんだろう、と期待して観るわけじゃない。

だって、八割がた同じ話だもん。娘が嫁ぐ家族の物語。結末もほぼ同じ。

だから、小津作の場合、”どんな風に”語ってくれるか、が楽しみなのである。
小説のように物語を味わうのではなく、画集のようにそのデザインを愛でるタイプの芸術作品。

白黒作品の場合は光と影の明暗の妙、カラーの場合はくすんだ色合いの中に赤や緑のキラッと光るアクセントの彩りを楽しむ。

本作を観るのは二度目だが、今回は”デジタル修復版”なので、よりいっそう眼にあざやかな画面が美しかった。
何回も観ていると、登場人物たちの感情の起伏と、画面の色のグラデーションが見事に連動している事に気がつく。
たとえば、口論のシーンの後に緑が多いゴルフ場の場面となって気持がスッと落ちついたり、登場人物たちの気分が高揚している場面では画面全体が華やいだ色どりになったりする。

そんな風に、色彩と感情の動きが巧みにバランスがとれているため、観ていて心地が良い。
だから、結末が分かり切っていても、何回観たとしても、楽しめる。
それはきっと、クラシックの指揮者がおなじみの名曲を違った解釈で聴かせてくれたり、落語の名人がオチを知っている古典で大爆笑させてくれるのとたぶん同じ。