このレビューはネタバレを含みます
家族と結婚を軸に綴る、頑固な父親の子離れドラマ。
本作の概要としては、昔ながらの頑固な父親が娘の結婚を認めたくないのだが……といった内容となっています。
初の小津安二郎監督作品でしたが、かなり楽しめました!
最初こそ早口な発声や、何がなんでも人物を真ん中に配置する、独特なカットに戸惑いましたが、徐々に慣れ始めていき、最後にはその演技やカットに心の安らぎを見出すようになりました。
初めて観た筈なのに、摩擦なく会話やドラマが脳内で噛み砕かれていって、父親の葛藤が手に取るように伝わってきました。
映画と同化しているとでも言いましょうか、まるで作品世界を作中人物と同じように生きていると錯覚してしまうほど、身体に馴染む感覚がありました。
こんな感覚になったのは、もちろん初めてのことです。
まだ、他の小津安二郎監督作品を観られていないため、この感覚が彼の映画によるものなのかは定かではありません。
その真相を確かめるためにも、早いうちに鑑賞の機会を作りたいと思っております。代表的な作品から手を出していく所存です。(レビューを投稿するのは、かなり先になると思います。ご了承下さい!)
また、作中1番の早口で捲し立ててくる、佐々木初(浪花 千栄子)のぶっ飛んだキャラクター性にも虜になる自分がいて、彼女が画面に登場する度に笑わせてもらいました。
あまりに好き過ぎて、一時停止しながら彼女の台詞をメモしたくらいにはハマってしまいました。
脚本自体も奇を衒ったものではなく、地に足着いた実直なものとなっていて、ストーリーの面でも安心しながら鑑賞することができました。
ずっと凝り固まった考えをもっていた父親が、娘の結婚を受け入れていく過程、そして決定的になった瞬間には、当時生きていた訳でもないのに大きなカタルシスを感じました。
ただ、1つ不満があったとすれば、クライマックスの娘の結婚式本番がカットされ、かつその後も、結局父親が娘の所へ向かった電車の車内で終わってしまった点は、個人的に気になりました。
これでは、父親が面と向かって娘に結婚を認める発言をしている光景を観客は観られないで終わる訳ですから、どうにもしり切れとんぼな印象は拭えませんでした。
とはいえ、良い作品であるということは間違いようのないことです。
早口は慣れれば聞き取れるようになりますし、また色彩も豊かで、映像的な満足度は非常に高いものを誇っていたと思います。赤いヤカンが良い味を出していましたね。
総じて、古き良き日本の空気感を味わいつつ、実直な脚本と安定した画に安らぎを感じる作品でした!