あしからず

彼岸花のあしからずのレビュー・感想・評価

彼岸花(1958年製作の映画)
3.8
これまた娘の結婚。
恋愛結婚が主流になってきた時代で、最初は恋愛を是としてた佐分利信がコロッと態度を変える頑固親父を発揮する。親の娘を想う気持ちと娘自身の幸せの摩擦がもどかしい。
安定の構図美で、飲み物の注がれてる量を完璧にそろえてるの変態的。小津初カラーで赤が綺麗に出るアグフアのフィルムが活き活き。赤いヤカンの絵画的役割すき。この色から赤い彼岸花を連想したけど、小津さんの思い出の彼岸花は笠智衆からプレゼントされた黄色の彼岸花らしい。
秋刀魚と同様に本作にも彼岸花は1度も登場せず。

メインは有馬稲子だが、他2人の娘模様も描き「晩春」や「麦秋」などより視点が分散されてる。いずれもそれぞれの親がやきもきしているお馴染みの構図。
「浮草」絡みで大映から富士子姐さんが特別出演。茶目っ気たっぷりの役で映画をマイルドにしてくれてる。
また笠智衆お得意の詩吟が披露され、戦争を唄ったそれに父親たちがしみじみと聞き入る場面で戦後の影を感じる。
田中絹代の空襲を語った「親子4人あそこまで1つになれたことなかった」の台詞がズシンときた。
妻が聞いてるラジオを消す佐分利信VS夫の背広を投げる田中絹代。
あしからず

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