kuma

コーマン帝国のkumaのレビュー・感想・評価

コーマン帝国(2011年製作の映画)
3.5
このドキュメンタリー映画を観るまで、ロジャー・コーマンという人はとにかく安上がりで若者ウケする映画を撮りまくり、多くの利益を得ようとする守銭奴的な人物なのだと思っていた。まぁ、その印象も概ね間違っていないのだけど。

しかし実は、紳士的でありながら野心家な一面も持つ、アメリカの映画史に無くてはならない存在だったという事がこの映画で分かった。今やアメリカを代表する監督や俳優陣が笑いながら当時の撮影についての話をするところが、彼がいかに映画人に愛されているのかを物語っている。特にジャック・ニコルソンのインタビューは長年の付き合いならではの関係性が見えて良かったし、クエンティン・タランティーノのアカデミー賞授賞式でのスピーチは、短いながらもロジャー・コーマンへのリスペクトに溢れていて素敵だった。

『スター・ウォーズ』などの大作映画の台頭によって彼が作り続けてきたインディペンデント映画は業界の隅に追いやられてしまう訳だが、その後のインタビューで「3500万かけて撮られた映画なんて価値がない。その資金をどこかに寄付した方がいい」と言い放つところは、その芯のぶれなさに感嘆してしまう。だからこそ彼は(良くも悪くも)「B級映画の帝王」なのだろう。
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