カタパルトスープレックス

ハート・ロッカーのカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

ハート・ロッカー(2008年製作の映画)
4.2
漢気溢れるキャスリン・ビグロー監督による戦争映画です。見ようによってはホークアイとファルコンによるアベンジャーズのサイドストーリー(ウソ)😂

『ハートブルー』(1991年)や『ストレンジ・デイズ』(1999年)といったエンターテイメントとしても楽しめる佳作を作ってきたキャスリン・ビグロー監督。ここ最近はドキュメンタリーっぽい作風になり、対象から少し距離をおいた客観的な視点の作品が多くなりました。元夫ジェイムズ・キャメロン監督と競ってアカデミー賞を獲得した本作からそれが顕著になってきたと思います。

観る人によっていろんなテーマを見つけられる作品だと思います。イラクやアフガニスタンにおける新しい戦争の恐怖、戦争が壊す人間性、人にとって大切なもの。

舞台はイラク戦争中のバグダッド郊外。アメリカの爆弾処理班の日常を描いた作品です。あえてリスクのある行動を取るウィリアム・ジェームズ一等軍曹(ジェレミー・レナー)。そんな危険な行動に反発する部下のサンボーン軍曹(アンソニー・マッキー)とエルドリッジ技術兵(ブライアン・ジェラティ)。なぜジェームズは危険な行動を取るのか?

まず、駐屯地における見えない敵との戦いが新しい。一般市民の中にいる敵。駐屯している場所が戦場。武器は爆弾やライフル。ハイテクや強力な最新兵器はない。誰が敵で、何のために戦っているのかもわからない。守るものがない。そんな中でのジェームズの命を顧みない行為は何のため?誰のため?

戦争映画を客観的に描くって非常に難しいと思うんです。どちらかに批判的になりがち。戦争は悪い!戦争反対!となりがちでもある。それよりも深い場所に観客を誘いためにはキャスリン・ビグロー監督のような客観視は有効なんだろう。戦場にいる臨場感がビシビシ伝わってくる。

最後がとてもよい。大人になると大切なものはどんどんなくなっていく。ふたつか三つ。いや、自分はひとつか。その一つって何なんだろう?