みおこし

逢びきのみおこしのレビュー・感想・評価

逢びき(1945年製作の映画)
3.6
ごく平凡な主婦だったローラは、ある日行きつけの駅の喫茶室で医師のアレックと出会う。意気投合して何度か会ううちに、恋に落ちるが二人にはそれぞれ家庭があり...。

デヴィッド・リーン監督の初期の作品。さまざまな不倫ものの作品の原点とも言える一本。たった1ヶ月間の逢瀬を描いていますが、彼らの関係はいたってプラトニックなもの。毎週木曜日にしか会えないというのがまた胸を締め付けます。当然メールも携帯電話もない時代だから、より想いを伝えるのが厳しかっただろうし、何より異性と2人きりで会うというのも憚られる保守的な世相。辛すぎる...!

とにかくモノクロ映像の美しさが圧巻。ラフマニノフのピアノをBGMに、夜霧に消える電車を見送り、人目を忍んで駅でキスしたり...。言葉にすればありがちなシーンなのに、すごく情緒があってホロリ。久々の恋の時めき、不倫への戸惑いなどローラの心情が、時に電車の窓や鏡を通して垣間見える時があって、それもまた秀逸でした。
戯曲が元になっているだけあって、ローラの心の中の独り言の表現もすごく文学的なものが多かったです。
アレックがローラに言うセリフも本当にロマンチックで、「お互いを愛しているというのはもう言葉にしなくても同じだ」というところ、どんな形であれ愛してしまったのは仕方ないよなぁ...と素直な告白に胸キュン。最後のデートも切なくて涙が出そうでしたが、まさかの展開でテンションガタ落ち。おそらく本作を観た人全員が同じ気持ちで、こう叫びたかったことでしょう。
「オバン!!そこどけや!!」と(笑)。

こんな終わり方アリなの?!え?!え?!となっているうちに終わってしまいましたが、許されぬ恋だから仕方ないのですよね...。潔く諦められただけでも良かったと信じましょう。
ある意味でこんな嫌な後味初めて笑っちゃいました(笑)。気になる方は是非ご覧ください!
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