『遙かなる山の呼び声』は、1980年公開の124分の山田洋次監督作品。高倉健は1931年生まれであるから当時49歳、倍賞千恵子は10歳下なので39歳、吉岡秀隆は10歳、ハナ一肇は50歳。吉岡は本作にはオーディションで選ばれたが、翌年から「男はつらいよ」で倍賞の息子役でレギュラーとなり、また同年より「北の国から」でもレギュラー出演することになる。展開が読める内容であるが、主役の二人高倉と倍賞が、映画を通して心情を抑えた演技であり、それだけに、二人がそれぞれ一回だけ感情を吐露するシーンは胸を打つ。特に最終盤に顔を背けて泣く高倉は見所。全体に悲哀感のある映画だが、渥美清が牛の人工授精師として登場するシーンと、ハナが倍賞に迫っているのを「親しい人だと思った」とコメントする高倉のシーンが、ユーモアにあふれる。なお、本作の予告編は、映画のハイライトがほとんど入っているので、映画を見てから視聴するのが適当。