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ニューヨーク・ストーリーのBaadのレビュー・感想・評価

ニューヨーク・ストーリー(1989年製作の映画)
3.7
持ち時間がけっこう長いオムニバス。
時間が中途半端なだけに返ってそれぞれの作家性が出たかな、という感じで、コッポラ編とアレン編はなるほどという楽屋落ち的な雰囲気を漂わせた出来になっています。作品の出来としてはいささかシュールではあるものの、アレン編が一番手堅くまとまっている様に思いました。

コッポラ編はどちらかというと雰囲気的には『マリー・アントワネット』を思わせる所があります。エンドリアン・ブロッディが出ているというので、録画してみたんですけれど見つからず。背の高いアラブ人の役で出ていたのかしら?

スコセッシ編は評判がいいみたいですが、内容的には時代遅れの設定かも、という感じがします。今時、才能ではなく容姿のみで、内弟子(アシスタントなのか、内弟子なのか、なんか微妙)をとる芸術家っているのかしら、とか、自分の才能の見極めもつかないのにあんな生活を続けるなんて、無防備にも程がある、なんて感想を持ってしまったらそもそも見てはいけない作品なのかもしれません。80年代だから成り立ったお話で、現在だったら別のアレンジが必要でしょう。オジサンの苦労にはいつの時代も変わらぬ部分があるとはいえ、若い女性の経済活動のあり方は時代によって随分と変わりますからねえ。色々工夫して見応えのある出来にはなっていますが、器用貧乏、という印象を持ちました。
思えば評価が高い割にはスコセッシって今ひとつ見る気にならない監督で、私は音楽映画しか見たことがないのですが、この映画でも音の使い方の演出や屋内の空間の演出は見事でしたね。

アシスタント役のロザンナは80年代の寵児でしたが思えばやっている役すべて、こういう容姿はいいけれどどっか抜けていて冴えない女性の役ばかりだったような。私はわりと好きだったんですが、今あんまりいい役が回ってこないのは年齢的にもキャラ的にも当然かな、とこれ見て改めて思いました。もう少しおばちゃん度が高まったらまたいい役が回ってくるかもしれませんね。

スコセッシ編が80年代の色を濃くたたえ、他の2本がその監督(あるいはファミリー)の変わらぬ作家性の基盤を図らずも見せている、と言う点でちょっと面白いオムニバスではありました。

(2007/5/6記)
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