ほーりー

罠のほーりーのレビュー・感想・評価

(1949年製作の映画)
4.3
『チャンピオン』と同じく40年代のボクシング映画からもう一本。

『ウエスト・サイド物語』『サウンド・オブ・ミュージック』のロバート・ワイズ監督の出世作『罠』は、ヒッチコックの『ロープ』と並び、"劇中と実際の上映時間が同じ"リアルタイム劇のはしりの作品である。

主演はいぶし銀の名優ロバート・ライアン。この方は元ボクサーで色々な職業を経て役者になった人だけあって、本作の役どころはまさにピッタリだった。

ロートル(死語だけど)のボクサーである主人公は、次の試合に命をかけていた。

ところが勝ち目のない試合と踏んだ彼のマネージャーは、ギャングからの八百長試合の誘いに二つ返事で乗ってしまう。

しかもどうせ負けるだろうとたかをくくったマネージャーは八百長のことを当人には話さないままだった(ヒドイ!)。

やがて試合のゴングは鳴り、ひとり何も知らない主人公は四角四方をロープで張った恐るべき罠の中へ入ってしまい……。

ボクシングシーンの緊迫感については『チャンピオン』よりも秀逸だったと思う。

ボクシング経験者であるライアンの演技や編集の巧みさもさることながら、試合状況を見守る関係者や観客たちのリアクションが素晴らしい。

特に八百長の主犯であるギャングを演じたアラン・バクスターが出色。

バクスターが劇中、不適な笑みを浮かべながら観戦しているが、試合運びが段々と当初と違う方向へ展開するに連れて顔の表情が強ばっていく芝居が良かった。

ちなみにこのアラン・バクスターという役者、顔に少しジャック・ニコルソンが入っているからその表情の変化が益々怖く感じる。

他にも隣にいる恋人そっちのけで自分でもシャドーボクシングしながら応援する若者や、身なりはいいご婦人だが「殺せ!」とか応援する言葉が汚すぎるオバサンなど、メインのストーリーには関係ないキャラなのだが妙に印象に残る人々ばかり。

■映画 DATA==========================
監督:ロバート・ワイズ
脚本:アート・コーン
製作:リチャード・ゴールドストーン
音楽:C・バカライニコフ
撮影:ミルトン・クラスナー
公開:1949年3月29日(米)/1951年2月27日(日)
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