イチロヲ

スキャンダルのイチロヲのレビュー・感想・評価

スキャンダル(1976年製作の映画)
4.0
雑用係の男(フランコ・ネロ)から羞恥行為を受け、隷属の歓びを覚醒させた夫人(リザ・ガストーニ)が、人生観を刷新させていく。ナチスが跋扈する有事のフランスを舞台にしている、エロティック・ドラマ。

本作の鑑賞にあたり、「大人たちが迫りくる死の恐怖を実感していること」を念頭に置く必要あり。女主人と雑用係の男が、日活ロマンポルノを彷彿とさせる、サドマゾ劇を展開。主従逆転の性倒錯が繰り広げられる。

後半部に入ると、死の恐怖を実感できていない15歳の娘に視線が向けられ、「女の幸福論」の核心へと近づいていく。夫人の目前には性の歓びを教えてくれた一人の男がいる。背後からは戦火という名の「死」が差し迫っている。娘には幸福を覚えてもらいたい。

15歳の娘のアテレコ音声が、人生に疲れたオバチャンの声にしか聞こえないが、「生きていることを実感するための性行動」をテーマとしたドラマ展開に訴求力が備わっている。そして、危機に直面したときの、性衝動の波及力を考えさせられる。
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