ゆきの

髪結いの亭主のゆきののレビュー・感想・評価

髪結いの亭主(1990年製作の映画)
3.5
ルコント作品初鑑賞。香り立つ官能的な作品でした。
子供の頃、私は祖母の化粧台がたまらなく好きだった。遊びに行っては化粧台に座りいろんな化粧品の匂いを嗅いで遊んでいたのをふと思い出した。その匂いたちは20年経っても忘れられない匂いだし、永遠に追いつくことのない「大人の香り」だとも思う。
少年のアントワーヌにとって、理髪店の赤毛の女主人から香る匂いもきっと私と同じそれなのだろう。
服の隙間から見える胸も彼の「性」を目覚めさせ、アントワーヌにとって理髪店は「大人の女性」を自分のものにできる空間だと虜になる。
そんな彼も中年の男性になり、ふと見かけた理髪店の女性に目を奪われる。
ついに見つけた彼のミューズ。
彼女はどこか悲しげな表情だが同時に全てを包み込んでくれる優しい雰囲気が漂っている。「過去がないの」と言う彼女はアントワーヌと過ごす「現在」を愛情を持って大切に生きる。しかしこの現在から愛情が無くなる日を恐れる彼女は幸せの絶頂である選択をすることになる。
一見、それは傍からみれば悲劇なのだろう。
しかし、アントワーヌは穏やかに笑い、踊り、またソファに座って彼女が帰ってくるのを待つ。彼女と過ごした理髪店にいる限り、彼女はアントワーヌのものだし彼女も彼の心の中に存在し続け愛を貰うことができる。
ふっと穏やかな夜に観たくなる作品でした。『仕立屋の恋』も併せて借りたのでこちらも鑑賞予定です。