coma

髪結いの亭主のcomaのレビュー・感想・評価

髪結いの亭主(1990年製作の映画)
4.5
愛しかない、そんな80分

アントワーヌは少年時代に理髪店の女主人に夢中になる。
豊満な肉体がシャンプー台に横たわる少年の体に触れる、彼女の独特の体臭はローションやオーデコロンの香りと混じりあって鼻腔を強烈に刺激する。
女主人への叶わぬ恋慕。
他の何も望まない、髪結いの亭主になる。それだけがアントワーヌの生きる目的となった…
随分と偏狭なフェチズム!

見事、髪結いと結婚したアントワーヌの欲望の物語。初見の印象はそんな感じ。

今回はアントワーヌの妻、マチルドの至福の物語として理解することが出来ました。
どの場面もマチルドが美しいのは、アントワーヌがいつも彼女を求めているから。求められてこそ自分は輝ける。人生はこの上なく輝いている。
無上の歓び。
日毎に老い、変化する人間のはかなさ。


五感を刺激するようなオーデコロンの夜のシーン
シャンプー中、客の詞の朗読を聞きながらの行為
甘美なシーンの数々に酔いしれます。

「夫に任せて」
「あの目を見ました?怒ると輝くんですよ」
どこに魅力を感じて、どんな愛情で人と人は繋がることが出来るんだろう
深くかみ合った者同士が離れることが出来なくなるほどの世界
愛の可能性を見せてくれるパトリスルコント監督が好きです。
coma

coma