ほおづき

キング・オブ・コメディのほおづきのレビュー・感想・評価

キング・オブ・コメディ(1983年製作の映画)
4.0
一度も舞台に立ったことがないのにお笑い芸人としての成功を目指している、他人の感情を読み取ることができないアスペ男の狂気を描いたブラックコメディ。
ずっと観てみたかった映画。


主人公の尋常じゃないポジティブさが終始不気味で、いわゆる世間ではアスペルガー症候群と呼ばれているような症状の人。
普通なら相手の表面的な言葉だけでなく態度などから言葉の真意を察するのだけど、彼は相手の本心がわからないから、何度断られてもなんでも自分の都合の良いように解釈してしまう。

また妄想癖もひどいのだけど、作中何度か出てくる妄想のシーンではネタを披露する場面はない。自分が成功して喝采を浴びたり、ちやほやされている妄想ばかりだった。
  
そんな自分本位な妄想と異様な不気味さばかりが続くので、口ばかりで才能がない人間なのかと思いきや皮肉にも彼のステージのネタは視聴者に大ウケ。          
主人公が言っていた「才能がある自分みたいな人間が芸能界に入るためには犯行を犯すしかなかった」みたいなセリフが、とても印象的で皮肉だなぁと思った。

何度か母親と会話をするシーンが出てくるけど、映画ラストのステージでは母親が死んでいることや精神病院?にいたことがネタとして語られる。どちらが真実なのかがわからないし、ネタではなく事実を語ったのがウケただけだったかもしれない。

お笑いが好きだからこのタイトル名聞くとどうしても例のコンビのほうを先に連想しちゃうんだけど、そもそもお笑いって自分のネガティブな感情や不幸な経験を笑いに変えてみんなを楽しませるところがある。
そう考えるなら犯罪を犯してしまったコンビの彼も、この映画の主人公も、過去に人には言えないようなつらい暗部があったのかもしれない。