「もうやめて!こっちのライフはとっくにゼロよ!!」と叫びたくなるくらいに共感性羞恥をぐりぐりと抉ってくる。テレビスターになることを夢みて、否、自身こそテレビスターに相応しいという妄想に取りつかれたルパート・パプキンを怪演するロバート・デ・ニーロの狂気。勝手にスターの別荘にガールフレンドと乗り込んでめっちゃ怒られるシーン恥ずかし過ぎて悪夢そのもの。
クライマックスにおける拍手喝采にどうしようもない違和感と拒絶を覚えたのだけど、前半部のシーケンスを顧みるとこの辺りのシーンも実は全て妄想の可能性がある、と気が付いてホラーのような戦慄を覚えてしまう。彼の生い立ちは全て説明されているにも関わらず、それが全く以て信頼できないという恐怖。
「将来、誰でも15分は世界的な有名人になれるだろう」という言葉を残したのは1968年のアンディ・ウォーホルだけど、架空の観客の前で芸を演じるポップ・アート的なシーンが幾度と存在することからして、本作がこの言葉を直接的に引用しているのは明らか。それは80年代のポップ・スター最盛期を経由してSNSによる「15分の名声」が可能となった現代に突き刺さる。好きか嫌いかと言われたら過ぎじゃないけどとにかく凄いとしか言えない、傑作ホラー。