よしまる

キング・オブ・コメディのよしまるのレビュー・感想・評価

キング・オブ・コメディ(1983年製作の映画)
3.1
昔に観て面白くなかったので頓挫した経験があるのですがJOKER繋がりでやはり観ておかなければと再挑戦。

結果、最後まで観てもやはり自分にはまったく肌の合わない作品だった。

デニーロの熱演、妄想を具現化したシークエンスの面白さ、軽快な会話劇、どれもが目を見張る質の高さで、観てて飽きないし楽しい。
では涙するほど自分に突き刺さったJOKERとの違いは何だろうか。

なるほど一見コメディアン志望の狂人というのは同じに見える。
だがしかししかし。アーサーが純粋に笑いで人が喜ぶことを生きがいに求めたのに対し、パンプキンはあくまで己の欲求のみを衝動としているのが決定的に異なっている。

オープニングからあの手この手と繰り返されるTVショーへのあくなき欲望、そこには動機も根拠もまるでなく、ただ軽薄な人物が終始描かれ続けるのみで、明日にでも急に心変わりして実演販売で包丁とか売っててもおかしくない勢いだ。
さらに狂った方向へと加速していくピプキンだが、ようやく初舞台で吐露される自らの生い立ち、そしてコメディアンへの渇望を笑いに変えて披露するものの、結局、おれはずっと目立ちたかってん!の一点張りで、少なくともこれで人の心を掴めるとはボクには到底思えなかったし、ただただ人々の笑顔が見たかったという痛々しいまでに実直なアーサーのそれとの違いに落胆してしまうほどであった。
だから先に挙げたような素晴らしい見どころも、ボクにとっては所詮飾りでしかなく、この映画を絶賛する気には到底なれない。

もうひとつ。妄想と現実の入り混じった映像という評価や批評をよく目にするが、ラストシーンまではきっちり妄想と現実を描き分けてあり何ら疑わしいこともない。ラストだけは妄想と言えばそう捉えることが出来なくもないものの、ポプキンの出てこないシーンがあったりしてちょっと無理筋過ぎないかと思う。監督自身が仄かしていることで余計にややこしいわけだが、なぜこんなにも多くの人が妄想モードで観ているのかとても不思議だ。まさかWikipediaにそう載っているからでもあるまい。