<概説>
コメディアンを志すもなかなかそのチャンスに恵まれない男ルパート・パプキン(演:ロバート・デ・ニーロ)。最後の頼みの綱にまで見放された瞬間、彼は誰も想像しないような方向に喜劇の舵を切る。
<感想>
個人的には意外なことに創作主人公。監督十八番の実話破滅劇を期待していたので、チャップリンやキートンと違ったのには意表を突かれた思いです。
けれど不意を突かれた落胆はなくて、パプキンはパプキンでいいキャラクターでしたね。ああいう手合いは実際大量にいますし、コメディはきちんと笑えただけに奇人一辺倒でもない。
脇を固める人々も常識的極まりない対応をしているのですが、傲慢さも垣間見えるいい塩梅。そしてそれでいてパプキンのトークを見たときのあのなんとも言えない表情。アレがあったからこそラストをどう取るかきちんと分かれます。
デニーロ本人がトッド・フィリップス監督作『ジョーカー』との関連を匂わせるだけある、貧富の階級差が対立する良作サイコスリラーでした。スコセッシ監督は最底辺からの登り坂を描くのも実はうまいですよね。
最後に本筋には関係ありませんが、ジェリーの拘束方法雑すぎて爆笑してしまいました。