お豆さん

にがい米のお豆さんのレビュー・感想・評価

にがい米(1948年製作の映画)
4.0
タイトルの渋さからネオレアリズモの鬱映画かと思って長いこと躊躇していたのだが、シルヴァーナ・マンガーノの豊かな太股に勇気をもらい、見ることにした。ふたを開けてみれば、豊満な尻、豊満な胸、豊満な太股、それらが泥の中で交わり合うキャットファイト、それから見事な胸毛。

毎年、田植えの始まる4月初旬から40日間、ポー川流域の水田地帯へ北イタリア中の村々から大勢の女性たちが出稼ぎに集まってくる。太陽の強い光にさらされ、時には雨も降る中で行われる田植えは決して楽ではないが、その細やかな作業には女性の繊細な手が必要なのだ。そこに紛れ込む強盗犯ヴァルテル(ヴィットリオ・ガスマン)の愛人フランチェスカ(ドリス・ダウニング)。彼女は天真爛漫な少女シルヴァーナ(マンガーノ)と、彼女に惹かれる兵士マルコ(ラフ・ヴァローネ)と出会う。成り行きで田植え作業をすることになったフランチェスカだが、よく働き、よく笑い、仲間同士で助け合う女性たちと共に過ごす中で、彼女の気持ちに変化が訪れる。主人公4人の関係図は、ざっくりと悪人のヴァルテル、彼に利用され続けるフランチェスカ、好奇心旺盛なシルヴァーナ、新大陸での新しい人生を夢見る堅実なマルコ、なのだが、悪人に疲れたフランチェスカと、善人に物足りなさを感じるシルヴァーナが、それぞれの「持ちもの」を欲することにより、その関係性が揺らいでいく。こうした4人の関係性に、実りや労働を象徴する「米」が絶妙に絡み、様々な場面を印象的なものにしている。

女性たちが肉感的な四肢を剥き出しにし、泥だらけになり、景気づけに歌いながら田植えに勤しむさまはとても力強く、現代のイタリアからは想像できないほど原初的だ。それは40年代イタリアの農作業風景の貴重な記録でもあり、その点でヴィスコンティのネオレアリズモ作品『揺れる大地』と似ているかもしれない。しかしそれだけに留まらず、コメディあり、セクシーあり、スリラーあり、ドラマあり、様々な要素が切り替えのメリハリを効かせながらバランス良く交わっており、異色の作品とも言える。

駅舎で出発を待つ列車の窓から見える悲喜交々をとらえたパーン、水田へと向かう女性たちの行進、宿舎の塀越しに行われる男女の求愛行動、隊列を成して苗を植える豊満な尻・尻・尻など、カメラワークもまた印象的。

2017. 18
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