みおこし

冬のライオンのみおこしのレビュー・感想・評価

冬のライオン(1968年製作の映画)
4.0
全く新しい形のクリスマス映画!(笑)自身の所有する領土と愛人の継承をめぐって妻や息子たちと激しい抗争を繰り広げることになるヘンリー2世の地獄のクリスマスを描いた人間ドラマ。舞台劇が元とのことでとにかく会話、会話、会話。名優たちの夢の共演に胸が震えました。

1183年、クリスマス時期のフランスはシノン城。時のイングランド国王のヘンリー2世は所有する領土と愛人のアレースをめぐる対立に決着をつけるべく、幽閉中の妻エレノアや4人の息子、リチャード、ジェフリー、フランス王のフィリップ、末子のジョン全員を招集。それぞれの思惑が交差する壮絶な駆け引きが始まる...。

リチャード役のアンソニー・ホプキンスとフィリップ役のティモシー・ダルトンのデビュー作であり、名優ピーター・オトゥールとキャサリン・ヘプバーンが夫婦役。アカデミー賞でも数多くの部門にノミネートされた傑作なので面白くないわけがない!
派手な戦闘シーンや、豪華絢爛な宴会のシーンなどが特にないのに、これほどまでに迫力たっぷりと感じられる時代劇は珍しいのではないでしょうか。そう感じる最大の要因は、キャスト全員の鬼気迫る熱演。これは舞台でもぜひ鑑賞してみたい!
時代劇だからただでさえ難しい単語が飛び交うのに、言い合いのシーンのマシンガントークがもう皆さんすごすぎる(笑)。特にヘンリー2世役のオトゥールの剣幕がもう怖すぎて怖すぎて、まさに王の威厳。
一癖も二癖もある息子たちも、「失地王」のあだ名でおなじみの四男ジョンを除いて(笑)全員が野心家かつ頭脳明晰なので、相手が肉親だろうが容赦ない仕打ちのオンパレード。
表面的なセリフの裏に、何重にも様々な策略が潜んでいて、それを暴き合う様を見るのがもう爽快の極み。固唾を飲んで見守る、とはまさにこのこと。

全員素晴らしかったのですが、本作でアカデミー主演女優賞を獲得したキャサリン・ヘプバーンが特に圧巻でした。公衆の面前では穏やかに王の隣で微笑む王妃を演じているものの、実は夫や息子たちに引けを取らない野心の持ち主。彼が真に愛しているのは自分ではなく妾のアレースであることを悟り、したたかに夫を陥れようと画策しつつも、どこか脆い部分も兼ね備えているという、微妙な感情表現が大変難しそうな役柄。世界一の女優の呼び声高いヘプバーンにしか演じ得なかったであろう稀代の名演技は必見です。

史劇ながら長さもちょうど良く、とにかく楽しめました。かなりオススメです!!
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