ロンドンのナイトクラブのしがない客引きがレスリング興行で一発当てようとするジュールズ・ダッシン監督1950年作品。全体的にフィルム・ノワール的な暗い色彩にダイナミックなカメラが躍動感を与えてた。リチャード・ウィドマークの無鉄砲なチンピラっぷりがハマってて、ジーン・ティアニーの無償の愛をささげる慎ましい役も合ってた。彼女はエルンスト・ルビッチ「天国は待ってくれる」の貞淑な妻が強く印象に残ってる。グレゴリウス役のスタニスラウス・ズビシュコの風格がすごいと思ったら、本物のプロレスラーとのことで納得。
汚いやり口で金を稼いでるナイトクラブの客引きのファビアンが、偶然見かけたレスリングの試合に触発され、レスリング興行で金儲けしようと開業資金集めに奔走する。彼が客引きしてるクラブ経営者のフィルの妻が夫に嫌気がさしてるらしく、ファビアンと裏で共謀して独立しようとするんだけど、フィルがそのことを知ってさあどうするかという展開。
ファビアンがかつての名レスラーを味方につけたことでレスリング興行立ち上げのメドが立ったところで、フィルの画策で思わぬ事態につながっていく中盤。ここでファビアンのストラングラーへの執拗な挑発がすごくて、その後のグレゴリウスとストラングラーの対決シーンの迫力も圧倒的だった。ここで精魂尽き果てたグレゴリウスが死に至り(「荒馬と女」を撮り終えたクラーク・ゲーブルを思わせる)、追われる身となったファビアンの終盤のあがきが痛々しかった。やっぱり最後は女の愛なんだね。