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街の野獣のBOBのレビュー・感想・評価

街の野獣(1950年製作の映画)
4.0
ハリウッド・ブラックリストに載ってしまったジュールス・ダッシン監督が、ハリウッドを離れる前、最後に手掛けたフィルム・ノワール。

大都会ロンドン。酒場の客引きをしている若いペテン師が、かつての名レスラーを取り込み、プロレスの興行主として一攫千金を企む。

"Brains and guts"

これは傑作。フィルム・ノワールらしいモノクロ映像美、舞台となる1940年代ロンドンの景観、スピーディーなストーリー展開、臨場感と躍動感のあるスリリングなアクション、各プレイヤーの思惑が複雑に交錯するサスペンスフルな人間ドラマと見応えしかない。最初から最後まで映画の世界に没頭できた。

本作も、監督の過去作であるセミドキュメンタリー形式のフィルム・ノワール『裸の街』同様、ロケ撮影が大半を占める。『裸の街』はニューヨーク🗽、本作はロンドン🇬🇧が舞台となっていて、街が主役級の存在感を放っている。

実際の元レスラー2人が、文字通り死闘を演じるレスリングシーンは、手に汗握る名シーン。巨体と巨体が本気でぶつかり合う迫力、見ているこちらまで息が苦しくなるような緊迫感、圧迫感が凄い。グレコローマンの誇りを懸けて闘うグレゴリウスの勇姿に胸が熱くなった。必殺技ベア・ハッグが炸裂する!!

主演のリチャード・ウィドマークが、富と名声を得ることにしか頭にないチンピラペテン師を熱演している。『廃墟の群盗』然り、『拾った女』然り、狡猾な男役が本当にハマり役である。主人公の恋人役を演じたジーン・ティアニー(『ローラ殺人事件』『幽霊と未亡人』etc)の美しさも光っている。傍若無人な振る舞いが仇となって転落していく恋人を決して見捨てることなく、深い愛を注ぎ続ける女神のような彼女の存在が、主人公の浅はかさ、愚かさ、救いようのなさをより一層際立たせていた。

果てしなき野望に呪われて死ぬラストシーンが素晴らしい。

"Harry. Harry. You could have been anything. Anything. You had brains... ambition. You worked harder than any 10 men. But the wrong things. Always the wrong things."

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