<概説>
アウトロー達の最後の大仕事は、五千万フランの金塊の強奪。成果を掠めとろうとするマフィアの手をのがれ、彼等は無事金塊とともに陽のあたる世界に戻ることができるのか。
<感想>
きっと私はこの作品を過小評価しています。
ただ過小評価する理由もまたあるのです。
ジャック・ベッケル監督は最晩年に『穴』を撮影しました。物語の大筋は違いますが、アウトローの転落劇という点は両作品に共通しています。
この『穴』が。良すぎた。
シャレていて。コンパクトで。悲壮感があって。
あらゆる作風を煮詰めたかの作品は間違いなく傑作。
そしてそれと比較すると、本作は素直過ぎました。
フィルムノワールらしいフィルムノワールで、いかにもな無法者物語。王道としてはこれ以上ないのですけれど、より良いものを先に知ってしまってはいささか物足りない。
ちょっとなよっとした、風流がこの作品にもあれば。
「おお『穴』の人のイメージに合致する!」
そんな風に拍手できたのではと。なんだか物悲しい。