改名した三島こねこ

現金に手を出すなの改名した三島こねこのレビュー・感想・評価

現金に手を出すな(1954年製作の映画)
3.5
<概説>

アウトロー達の最後の大仕事は、五千万フランの金塊の強奪。成果を掠めとろうとするマフィアの手をのがれ、彼等は無事金塊とともに陽のあたる世界に戻ることができるのか。

<感想>

きっと私はこの作品を過小評価しています。

ただ過小評価する理由もまたあるのです。

ジャック・ベッケル監督は最晩年に『穴』を撮影しました。物語の大筋は違いますが、アウトローの転落劇という点は両作品に共通しています。

この『穴』が。良すぎた。

シャレていて。コンパクトで。悲壮感があって。

あらゆる作風を煮詰めたかの作品は間違いなく傑作。

そしてそれと比較すると、本作は素直過ぎました。

フィルムノワールらしいフィルムノワールで、いかにもな無法者物語。王道としてはこれ以上ないのですけれど、より良いものを先に知ってしまってはいささか物足りない。

ちょっとなよっとした、風流がこの作品にもあれば。

「おお『穴』の人のイメージに合致する!」

そんな風に拍手できたのではと。なんだか物悲しい。