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リービング・ラスベガスのHKのレビュー・感想・評価

リービング・ラスベガス(1995年製作の映画)
4.8
ジョン・オブライエンの半自伝小説を映画化。監督はマイク・フィギス。キャストはニコラスケイジ、エリザベス・シューなどなど

ハリウッドの売れっ子脚本家だったベンは、ある中が原因で会社を首になった。友達や妻子からも逃げられ、人生に絶望したベンは退職金代わりに貰った小切手と手元に残ったお金でロサンゼルスからラスベガスに向かう。彼は手元に残ったお金を全てお酒に変えて死ぬまで飲み続けることを決意した。そんな男が一人の娼婦と出会う。

人生に絶望した人間が、世を捨てるまでの間をせめてもの快楽に浸る為に、束の間の優しさを求めて娼婦に求愛する。娼婦もまた同じ境遇な人間にシンパシーを感じ、彼女の唯一の純愛を彼に捧げる。

こんな、素晴らしい映画があるとは思いませんでしたね。社会の荒波から落ちた人間が落ちるまでの過程を、儚くも幻想的に見せる演出が素晴らしい。何よりも、光の演出が良くできていました。プールサイドで酒や水に反射した光が織りなす幻想世界が、目に釘付けになった時、一種の夢見心地にさせる。

死ぬことはエロと同じだという言説を聞いたことがありますが、まさにこのようにお酒と交わりによる快楽の絶頂を迎えてのラストというものは、ある種のエクスタシーとでもいえるのではないのでしょうかね。

このような映画は、演じる人間が非常に魅力的でないと成り立たないような映画なのですが、ニコラスケイジは見事にそのような人間を演じきっていました。もう何もかもどうでもよくなった人間が見せる開き直ったようなような演技も見事ながら、そこから我に返ったときの当惑っぷりも見事に演じきっていましたね。

彼に身を投じる娼婦を演じたエリザベス・シューも、初めはどう考えてもクズな娼婦だったのが、段々と良妻になっていく過程が一つの変身のように感じて良かったですね。だからこそ、こんな切ない最後を演じきれたのだと思いますね。

いずれにしても、見れて良かったです。あまりこういうラブロマンスは好きじゃないと思っていたのですが、バッドエンドなのですが、まるで一人の人間が最後まで逃げ切ったような死にざまを見せられて、個人的にはとても良かったと思います。人間はいつか死にますからね。最後ぐらいあれくらい好きなようにさせてもらいたいものです。
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