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パパは、出張中!のsonozyのレビュー・感想・評価

パパは、出張中!(1985年製作の映画)
4.0
エミール・クストリッツァ監督の長編2作目。
カンヌ国際映画祭 パルムドール受賞作。

1950年〜52年、ユーゴスラビア・サラエヴォ。
6歳の少年マリクの語りで、彼の体験が綴られていく。
マリクはメガネの兄ミルザ、父メーシャ(ミキ・マノイロヴィッチ)と母セーナ、祖父と暮らしていて、親友のヨージャとサッカーボールを欲しがってる。

女好きの父メーシャ(妻セーナの兄ジーヨの妻アンキツァと2年間愛人関係)は家族と仲良く暮らしていたが、ふとした政治的コメントがきかっけで、人民委員会の委員ジーヨ経由で逮捕されてしまう。
当時、スターリン政権下のソ連の支配から外れ独自路線を歩むチトー政権は、ソ連/スターリンに同調する者を反ユーゴ的として逮捕し労働キャンプで再教育を受けさせるような時代だったのだ。

メーシャが連行される日は二人の息子の割礼の日。なんと、床屋のおじさんが剃刀で皮の先っぽを切るんです。。。
無事、割礼を終えた息子に優しい言葉をかけ、家を出ていくメーシャ。

セーナは子供たちに「パパは出張よ」と伝えているが、メーシャの居場所も分からず連絡も取れず、悲しみと不安に暮れる。
マリクは夢遊病となり夜、外を徘徊するようになってしまう。

やがてメーシャとも連絡が取れ、家族はメーシャのいる土地に越し、一緒に暮らせるようになるが・・・

政治的抑圧で、辛い目にあった一家の物語ではありますが、監督独特のユーモアやエロが散りばめられているのと、可愛いマリクが、割礼、初恋、しょーもない女好きな父のあれこれを目撃したり邪魔したり、式典で知事にバトン渡しながら宣言する緊張体験したりが微笑ましい。

家の中でマリクが小型映写機を手回しし、兄ミルザがアコーディオン弾きながら家族でアニメを見るシーン、良かったなぁ。
(多分、ミルザが映画館からもらってきたフィルム)

監督作の『アンダーグラウンド(1995)』で有名なミキ・マノイロヴィッチさんが、本作もいい味。ほっこり読後感でした。
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