ミシンそば

パパは、出張中!のミシンそばのレビュー・感想・評価

パパは、出張中!(1985年製作の映画)
3.6
クストリッツァ初期作品。
後年の作品と違ってしっとり感が強く、後年の作品しか知らない自分が期待していた「ムラ、雑さ」はあまりない丁寧な筆致で描かれた作品だった。
クストリッツァ作品にあるようなセリフ回しやキャラの絡みは観られるし、傑作であることには違いないが、正直言って映画作家としてのクストリッツァは、この時点では開花しきってないな。

主人公マリク役の子役、演技と言うか、描き方と言うかそこまわりが特に秀逸。
親子喧嘩や「プロレスごっこ」に割って入る場面は、リアルでありながらも凡庸な演出とは一線を画する演出であり、パルムドールも納得。
物語が進むと同時に大人たちのクズさや、汚いところを見せつけられ、マリクが「成長せざるを得なくなる」感じももちろんあり、残酷だが美しくはある。
時代ゆえだろうが、加害者はもちろんのこと被害者(父親)も結構クズ…。

食い足りなさは多少はあるが、ラストのマリクの表情だけで相当に救われる。