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マルクス兄弟 オペラは踊る/マルクス兄弟オペラの夜の教授のレビュー・感想・評価

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子供の頃はドリフターズ、あるいは志村けんの笑いがよくわからなかった。
ただ齢を重ねて段々とその「様式美」の面白さがわかってきたところもあり、いわゆる「お笑い」よりも「コメディ=喜劇」の方が好きになってきたというのもある。
「お笑い」と「コメディ」の感覚的な定義の違いについてはここでは割愛。

ただ、映画という表現を基準に考えれば、映画とお笑いは相性が悪い気がするし、対して映画とコメディは親和性が高い。
それは単に構造として荒唐無稽なものに「ツッコミ」を入れて観客を現実に引き戻す「お笑い」と、劇世界に没入させて現実世界が歪んでいくことそのものの面白さの違い。

本作はその劇世界の面白さ、セリフによるネタ的な面白さではなく、演者であるマルクス兄弟の「芸」の力量と、描いている世界観を楽しむという部分では「映画」に合っている。
特にグルーチョ・マルクスが演じるドリフトウッドのイカサマ詐欺師っぷりと、その怯まなさ、それでいて陽気な印象が快活で良い。

文字を読むことも書くこともできないが親友のオペラ歌手を売り込むためにマネージャーを買って出るフィオレッロ(チコ・マルクス)、セリフは一切なく基本笑顔だが最も破天荒な行動をするトマッソ(ハーポ・マルクス)のそれぞれのキャラが立っているだけではない哀感が見どころ。

長すぎる契約書を読むことや署名ができないフィオレッロとイカサマな契約を推し進めるドリフトウッドの掛け合いや、狭い客船内の客室に訪れる人々が鮨詰めになって溢れてくるシーン、尋問に訪れた警官を撹乱するためにベッドを動かすシーンなどは、よく知るドリフターズのコントのよう。
何が面白いのかわからないがクセになる動きの妙で楽しい。

特に「お笑い」が主流となった現代の日本では、喜劇/コメディの面白さを学ぶ上で非常に最良のテキストだった。
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