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イップ・マン 序章の福福吉吉のレビュー・感想・評価

イップ・マン 序章(2008年製作の映画)
3.5
1930年代、中国・広東省の佛山で詠春拳の達人イップ・マン(ドニー・イェン)は家族と平穏に暮らしていた。しかし、日本軍の侵略により町は占領され、家を没収されたイップ・マンは貧しい生活を強いられる。そんなある日、イップ・マンは日本兵と武術試合をして完勝したことから、日本軍将校の三浦(池内博之)はイップ・マンに日本兵への武術指導を要求する。

前半に、佛山でのイップ・マンの日常と達人ぶりを描き、後半に日本軍侵略による佛山の人々の苦境と日本兵に追われ、戦いに導かれるイップ・マンの姿を描いています。

前半は明るく、妻子に睨まれながら佛山の武術家や道場破りを悉く倒していくイップ・マンのスピード感に満ちた格闘アクションが盛り込まれていて、とても楽しい流れになっています。とにかく強すぎるイップ・マンの無敵感が良かった。でも裕福な暮らしをしているためか、イップ・マンの奥さんがイップ・マンに対して強圧的だったのが気になりました。最強のイップ・マンも奥さんに頭が上がらない姿はユニークでした。

しかし、日中戦争勃発によりイップ・マンは家を没収され、貧困の暮らしを余儀なくされるため、作品の雰囲気が一気に暗くなるので、重い気分になりました。そんな中、日本軍の将校・三浦が現れ、佛山の人々に食料をエサに日本兵と戦わせるようになり、ストーリーが一気に戦闘モードに流れていく様子はシリアスながらもイップ・マンの戦いが観られると思い、ワクワクしました。

日本軍将校の三浦は、武術に関しては正々堂々としており、イップ・マンとの対戦を求めたのもイップ・マンの強さに惹かれたためであったので、日本軍の登場人物としては極めてフェアに描かれていた印象を受けました。三浦の部下のメガネくんが日本軍のイメージを一人で下げていたので、憎まれ役がメガネくんにうまく逸れた感じです。

本作の見どころはなんといってもイップ・マンの格闘アクションに尽きます。前半は余裕を湛えた表情で相手を翻弄し、後半は怒りを秘めた必死の表情で相手をねじ伏せる姿を観ることができ、ただの格闘アクションでなく、イップ・マンの感情が伝わってくるアクションとなっており、観ていて熱くなりました。

とても面白かったです。ドニー・イェン演じるイップ・マンの人柄と秘めた武術に対する思いが上手く描かれていて良かったと思います。

鑑賞日:2022年9月22日
鑑賞方法:BS/CS ザ・シネマ
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