ブラックユーモアホフマン

イップ・マン 序章のブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

イップ・マン 序章(2008年製作の映画)
4.7
傑作。
さながら武術版『ライフ・イズ・ビューティフル』のようだと思った。『ディア・ハンター』とかも思い出した。
こんな大河ドラマだと思わなかった。武術家が主人公のアクション映画であることは間違いないんだけど、と同時に戦争映画で、戦争という時代の中で人々の生き方・考え方が変容してしまう、その中で高い精神を保ち続ける詠春拳の師匠イップ・マンに人々が集い希望を託していく様が感動的。
本当はできるだけ闘わずに済むのならもちろんそれが一番なのだが、というのがまたカッコよくて。普段は落ち着き払って余裕のあるイップ・マンが、かつての友人たちが殺されていくのを目の当たりにして、珍しく怒りを露わにして仏山の尊厳の為にリミッターを解除して拳を振るうというのも感動的。
詠春拳は動きに無駄がなく本当に実践的な感じがしてカッコいい。それを体現するドニーさん。
ドニーさんはハンサムで、言うまでもなく超カッコいい。「舐めてた相手が殺人マシンでした」ものでもあるので、『アウトロー』とかも思い出す。ドニーさんは東のトム・クルーズという感じがする。スターの匂いがプンプン。このシリーズはドニーさんのスター映画でもある。
池内さん演じる三浦は、悪役なんだけどちゃんとした空手家だから道理の分かる人物でもあって、全く尊敬できない人物でもないように描かれているのが良い。
フィルム撮影の映像も美しくて、名作の風格を漂わせている。序盤と中盤以降の色彩のトーンの差とかも良い。
川井憲次さんの音楽もとても良い。
日本語を話すキャストの演技があまり良くないのはちょっと残念。