フライ

ヘヴンのフライのネタバレレビュー・内容・結末

ヘヴン(2002年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

禁じられた恋と言うか、罪と罰と言うか、一言では言い表せない切なさと愛を感じさせてくれる作品。
単純に本作を見たら身勝手極まりない二人の恋の逃亡劇だが、色々なシーンや作品としてのメッセージを考えると中々の奥深さに、尊さを覚える素敵な作品に思えた。

冒頭ヘリのシュミレーターで急上昇するジョバンニ・リビシが演じる憲兵隊で優秀なフィリッポは、ヘリに限界高度がある事を注意され、何処まで行けるのかを問う。
ケイト・ブランシェットが演じる英語教師で未亡人のフィリップ・パカードは、大企業の会長ヴェンディチェの悪事に強い怨みを抱き爆弾を仕掛け殺害を試みる。しかし殺してしまったのは、全く無関係の2人の少女と父親、掃除婦の4人だった。
憲兵隊に捕まったフィリップは、数年前から麻薬密売で暗躍するヴェンディチェ告発の手紙を憲兵隊に出していてが、揉み消されており、単純に4人を殺したテロリストとして扱われる。ヴェンディチェを殺せなかった悔しさと無関係の人を殺した悲しみから追い詰められ気を失うが、通訳兼記録係として立ち会ったフィリッポは、フィリップの美しさと純粋さに心を打たれてしまう。
家に帰ったフィリッポは、彼女が弟の学校の英語教師で人格者ある事などを知るが、その日の夜寝小便をしてしまう。朝シーツを洗っていると憲兵であり尊敬する父親に見つかり、心配され事情を聞かれると、恋をしていると告白する。
フィリッポは、彼女を救う為に色々と画策するが、フィリップの牢屋は盗聴されており憲兵隊上層部には筒抜け状態だった。

本作は、殆どジョバンニ・リビシと、ケイト・ブランシェットの2人に魅せられる作品だが、特にケイト・ブランシェットの、今まで見た作品では、見た事の無い儚い雰囲気の魅力に、目が離せなかった。

作内に描かれた悲しいシーンや胸糞シーンに、複雑な感情的にさせられる内容だったので、作品としてのメッセージがつかみずらかったが、色々な所に布石が打たれていたので、自分なりに解釈出来る面白さのある映画に思えた。
フィリップが無関係の4人を爆弾で殺してしまうと言うかなり衝撃的なシーンから始まり、フィリッポや父親、弟、そしてフィリップと友人の、心に染みる描き方とは相反し、権力者達の胸糞感に苛立ちを覚えるなど、それぞれ感情に訴える展開に面白さを感じた。二人の逃亡劇は、フィリップの4人への罪を償う表の姿勢とは反し、普通に考えれば身勝手で、フィリッポ含め周りの素敵な人達迄苦しめる憎むべき存在にすら思えたが、ラストシーンや全てを相対的に見た時全く違う尊いものが見えた。
色々なシーンに切なさと感動を味わえるが、イタリアの美しい風景と、情緒溢れる音楽が、世界観に深みを増しているので、尚更心に染みた。

ここからはガッツリ自分の勝手な考察が入るので、本作観ようと思っている人は読まない方がいいかと。
作品を観て自分なりに考え感じるのが好きならオススメの映画です。

二人の名前や色々なセリフから二人はキリスト教徒である事は分かる。更に冒頭シーンから、ラスト二人はヘリで逃亡したのでは無く死を選んだのだと思えたし、それが二人の償いであり皮肉も込められている様にも思えた。
二人が自首し、罪を認め償う事で、ある意味単純にめでたし的な作品になるとは思えたが、本作はキリスト教徒である二人が、自死と言う絶対やってはいけない事を選んだ点に悲哀と尊さがあると思えた。現世の卑劣で欲にまみれた人達に、訳の分からない罪を着せられて裁かれるよりも、地獄で真っ当な裁きにより一生責めに会い苦しむ方が良いと言っている様な皮肉を感じたし、迷惑を掛けた人達へ許される身で無い事への謝罪と理解、同時に、代償にも思えた。とは言え自分はキリスト教徒では無いので、そこまで深く考察出来ないのはとても残念…。
終盤食事をしながら見つめ合う二人と結ばれる姿、ヘリの上昇シーンに、単に男女の愛ではなく、人としての深い信頼と慈愛、尊き行いにすら感じ震えたし、二人であれば死も乗り越えられると不思議な気持ちにも。

内容は宗教色強めにも思えたが、中々見応えのある重厚で愛のある素敵な作品だった。
因みに自分の勝手な備忘録を含めての、こうだったら良いなと言う考察が入っているので、ここまで読んだら話し半分で参考にしてください。
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