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ヘヴンのfilmoGAKUのレビュー・感想・評価

ヘヴン(2002年製作の映画)
5.0
【ヘブン】個人のメモ・雑記
キェシロフスキ氏の遺稿となった三部作「天国」「地獄」「煉獄」について、それぞれが受け継がれて映画化されている。「天国」は2002年の『ヘブン(Heaven)』、「地獄」は2005年の『美しき運命の傷跡(L’enfer)』、そして「煉獄」は2007年に『Naděje(希望)』として。

この『ヘブン』の映画化はトム・ティクヴァ監督によった。ティクヴァ氏の『ラン・ローラ・ラン』も氏からの影響大、特に『偶然』、だと散々と言われて、監督自身も特に否定はしていないし、そしてそれが別に悪いことだとは思わない。ここフィルマークスの多くのレヴューも得意げに同じ事をいってる。だが、実際そうだろうか?

この『ローラ』鑑賞から受けるのは、『偶然』とは全く異なる作品であるという点だ。氏の作品受容の相を想起させるような、人生の相は多様であり、『ローラ』が描くところもこの人生の多様・多角性を3点から描くという以外に同じとする点は別に見当たらない。にもかかわらず、全てが「偶然」のテーマと感じるという理解・解釈の一元化、悪くいえば「思い込み」というものは人によっては避けられないものなのかもしれないと感じレヴューなり評価・批判というものが厄介だなとも感じた。氏自身のインタヴューでも、一番大切なものと一番怖いものを、観客であり、その観客の無理解だと言っているのは印象的だ。

『ヘブン』を撮影したティクヴァ氏もこの遺稿の映画化に際して、他人の残した意志をそのまま作品化することはしたくなかったと言っている。独自の映像表現で独自の世界を目指したと強い意志を表明している。原作(遺稿)を読むと、確かに、それを可能にしたのか否か、そのティクヴァ氏が表明したことの真価を納得できる作品だと感じる。
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