フライ

スウィート ヒアアフターのフライのレビュー・感想・評価

スウィート ヒアアフター(1997年製作の映画)
3.6
田舎町で起きた事故が原因で展開される、重い内容のヒューマンドラマだが、独特の空気感や気持ち悪さ、陰湿な内容が本作独特の面白さとして感じた作品。

弁護士のミッチェルは、小さな町で起きたスクールバス子供21人死亡事故で事故原因は関係なく大金が取れるバス会社や国をターゲットとして集団訴訟を提起する為、子供を亡くした親たちを説得しに、閉鎖的な田舎町にやって来た。ミッチェルには社会に馴染めない薬物に溺れるゾーイと言う娘がいるが、何年も会えず時間を問わずかかってくるコレクトコールは、嘘と金の無心ばかりで心を痛めていた。
子供達の親の多くは色々な問題を抱えており、訴えを提起する上で心証の良い親、数人をピックアップし、怒りを煽りながら説得する。そして事故で生き残った運転手ドロレスから話を聞きプラスになると確信したミッチェルは証言を依頼。スクールバスで最前列に座っていた、子供唯一の生き残りで下半身不随になったニコールにも話を聞き証言を依頼するが、訴訟に対して違和感と不信感を感じており、心には大きな傷を抱えていた。
唯一の事故目撃者であり二人の子供を亡くしたビルは、訴訟への嫌悪感と疑念により訴えを取り下げるよう説得するのだが。

閉鎖的な田舎町独特の雰囲気や、親達の不倫。父娘の近親相姦など気持ち悪い要素が満載されている上、作品内で出てくる絵本の童話、ハーメルの笛吹き男のストーリーがリンクしながら進む展開に、とても興味を引かれ楽しめた。更に弁護士ミッチェルの抱えた闇が、作品を一層暗く沈ませる上、ラスト、ニコールの証言が何とも言えないやるせなさを覚えるのと、ゾーイの父親への苦しい訴えが重なり息苦しさを覚え、作品の面白さとして感じられた。
ひたすら重い内容なだけに、ニコールの証言で心配だった事が、ラスト少しだけ救いを見せるのも良かった。
時間軸が飛び飛びで途中分かりずらかったのは残念なのと、少し単調かなとも。

暗い系で考えさせられる作品を好む人なら楽しめると思うが…かなり人を選ぶ作品だと思うので、興味ある人はある程度調べた方が良いかも。
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