『好男好女』(英題:Good Men, Good Women)は、1995年に制作された108分の台湾・日本合作映画。日本語字幕版が入手困難なため英語字幕版を視聴。侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の『悲情城市』『戯夢人生』に続く台湾現代史三部作の第3部。本作の時代背景は、1)日本占領下から白色テロの時代と、2)それを劇中劇にした内容、3)それを演じた女優(演、Annie Yi =伊能静)の現代であるが、一人二役であったり、1)-3)がランダムに映画に織り込まれており、登場人物も多彩なので、ストーリー展開の理解ができない作品。作品視聴後に、複数の解説を読んではじめて何が描かれているのか、ようやくわかった。本作のテーマである国民党による政敵の殺害の恐怖は、十分に伝わる内容。ちなみに、本作の主演の伊能静の祖父は基隆市副議長だったが二・二八事件で国民党政権により殺害されている。
劇中劇は歴史上の人物である鍾浩東(チェン・ハオトン)と蔣碧玉の物語を描く小説『幌馬車の歌』を改編したもの。鍾浩東が投獄後に白色テロで死刑にされる話が一つの軸になっているが、彼が処刑場に連れられる時に、他の牢獄につながれた人たちが歌ったのが、彼が好きだった日本語の歌詞の「幌馬車の唄」であり、本作でも女性政治犯死刑囚が名前を次々に呼ばれた後に処刑場に連れられるときに、この歌が見送る同房の人々によって歌われる(開始1時間22分前後)。同様のシーンは映画「悲情城市』にもあり、こちらでは男性政治犯死刑囚が同様に処刑場に連れられる時に「幌馬車の唄」が歌われ物悲しい(開始1時間42分前後)。
三部作に共通する欠点は、ストーリー展開とは無関係のシーンが長く、複数あること。たとえば、本作ではバトミントンのコートで口論が行われるシーンがあるが、その前に、延々とバトミントンでラリーを繰り広げる場面があり(これらのシーンは状況の理解に何の助けにもならない)、結果として、映画を冗長にしてしまっている。
三部作の中で、日本語が登場するのは最も少ない本作であるが、劇中劇の一部は日本語であったり、女優の部屋で流れているテレビの中で、小津安二郎の『晩春』の原節子の映像流される。侯孝賢監督は、「私は『晩春』が好きだ.原節子が好きだ.彼女こそ好男好女だ.」と述べている.