このレビューはネタバレを含みます
🌙2024.11.17_24-185
「昔あるところに国があった」
”ユーゴスラビア“ 本作監督エミール・クストリッツァが生まれ育った国の名前。
そのユーゴラスビアとそこにある地下世界の崩壊の物語を、個性的な登場人物たちとシリアスな状況を織り交ぜるというカオス具合で描く。動物園のシーンやその他 衝撃的なシーンは多いが、戦争映画なのに明るく見える。常に音楽を演奏するブラスバンドがついて回ってくれているからだろうか。そのバランス感がとても好きだった。
デュシャン・コバチュヴィッチが20年前に書き下ろした戯曲をベースに作り上げた本作。ただ「戦争が続いていると嘘をつき、人々を地下に閉じ込めた男の物語」という部分以外は全て変えることになったそうだけど。
脚本はクストリッツァとコバチュヴィッチの共同制作。主要キャストはユーゴ出身者で固めた。
コバチュヴィッチ曰く、「ユーゴラスビアをあまり知らない人たちに国民の生きざまや、この悲惨な戦争が起きざるを得なかった理由について知ってほしかった」とのこと。明るい雰囲気の中にふと見える悲しさはこの想いが見えるからなんだろうな。
ラストは小さな半島で登場人物勢揃いし、楽しそうに踊ったりパーティーをしている。これが彼らの理想郷なのだろう。
「“戦争"、"冷戦"、"戦争"」の3つの章で進む本作。彼らの理想郷がこの世には無かったことが悲しい。
「この物語に終わりはない」