mikoyan358

アンダーグラウンドのmikoyan358のレビュー・感想・評価

アンダーグラウンド(1995年製作の映画)
5.0
2021/8/26再鑑賞
TV放映を序盤の途中で目にして、そのまま離れられず結局最後まで鑑賞。喜怒哀楽の全ての感情が劇中を通して激しく揺さぶられる人間賛歌でありながら、シニカルな笑いとかファンタジー要素とかも極めて自然に混ぜ込みつつ、語り出すと何日もかかるであろうユーゴスラビアという国の歴史そして人々が経験してきたであろう感情をこの3時間にまとめ上げたエミール・クストリッツァという監督を、天才と呼ばずして何と呼ぼうか。ラストのあのシーンは全映画の中でも五指に入るほど印象深く、観るたびにああここに帰ってこられて良かったという気になる。この映画を観続け愛する事で、私もユーゴという国があった事の語り部の一翼を担いたい。

2017/9/24鑑賞
恵比寿ガーデンシネマにて5時間14分の完全版を鑑賞。個人的にもこれまでで一番長い映画にもなり果たして間延びしたりしていないか?と気になっていたが、そんな考えが失礼にあたるほどにさらに濃厚になり5時間一度も飽きたり意識が飛んだりすることがなく引き込まれ続ける、真の意味での傑作へと進化していた。マルコとクロを中心とした関係が丁寧に描写され(通常版でなかったシーンのほうがむしろ結構印象に残っている)、それがより最後の数十分の衝撃そしてやるせなさを強くさせる。実際に「旧ユーゴ」と呼ばれる場所を訪れ、ベオグラードの殺風景なビルとチトーの墓くらいにしか「ユーゴスラビア」という国を感じられなかった身としても、ラストのあのシーン含めクストリッツァが言いたかった事が痛いほど理解できたし、これからもずっと「昔、あるところに国があった」という事を映画を通じて彼に語り継いで行って欲しいとも思う。

2011/1/18鑑賞(鑑賞メーターより転載)
観終わってどっと疲れるが「凄いものを見せられた...」という充実感もまた半端でない超力作。第二次大戦から90年代の内戦までユーゴスラビアに生きる人々の壮絶な50年間を、時にはコミカルかつシニカル、時には残酷に描き上げ、単なる歴史教科書ではなく人々の希望と生命力が伝わる叙事詩にするとは...何とも言えぬ余韻を残すラスト数十分含め、この尺でこんな離れ業を実現したクストリッツァ監督はやはり天才に他ならない。この監督お約束の飛躍やドタバタもあり観る人を大いに選びそうだが、自分にとっては傑作の一本に仲間入り。
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