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ジーザスキャンプ 〜アメリカを動かすキリスト教原理主義〜のTAのレビュー・感想・評価

3.5
   2006年の作品。アメリカという大国に巣食う病的なまでのキリスト教福音派の一つの姿を追ったドキュメンタリー。
   人間は古代に一つの細胞から進化して現在に至るという進化論を徹底的に拒絶し、我が子に余計な知識を与えることを憂う父母の多くは自宅学習を選択する。人々は神(GOD)がお造りになったと教え、進化論を信じる政治家や科学者は嘘つきだと教えるためだ。聖書に書いていることだけを信じさせ、科学や他の宗教を徹底的に否定する。
   キャンプでの一場面が印象的だった。



「みんな、ハリーポッターは好き?」

 子供たち「ハーイ」(*゚▽゚)ノ

「あいつは魔法使いだ!地獄で裁かれなければならない!だまされるな!」
   
   子供たち→   ( ;∀;)

「神さえ信じていれば救われる。環境破壊?温暖化?それは政治家の狂言だ。動物や資源は神が人間の為に与えたもうたモノだから自由に使ってもいいんだ。それで地球が危機的状況になるなら、それは世界の終末が近づいている証拠であり、救世主が現れる徴でもある。その日のために我々は神を信じている。ハレルヤ。」
「他の神を信じている人間は不幸だから助けてあげなきゃ。それを実行に移したブッシュは聖人だ。イスラム教徒を名乗るISは子供のころから銃を持たせて訓練してるっていうじゃないか。こちらも負けていられない。だから子供たちを神の元に導くのさ。」





   私は、宗教について否定はしないし、今日、もはや霊性や宗教的なものは日常生活に即した“慣習”に根ざしている。
   政治との結びつきもある程度は致し方ない(完全な分離は不可能)とも思っている。そもそもお金の価値を信じること、資本主義、まだ見ぬ明日が来ることを無条件に信じること等、『何かを信じること』には必ずと言って良いほど宗教的な一面がある。人間は元来霊性から切り離して考えることなどできない。
   そして私たちが所謂『宗教』と呼んでいるものは、私たちが生活する世界に『外部』を設定することによって、個人が抱える解決不能の問題や苦悩を引き取るシステムによって成り立っているものではないか。
   現実の世界に存在してない厄災や敵を設定して、信仰の名の下に力を以て現状の変更を強いることは果たして正しいといえるのか。
   この作品は比較的中立で明確な答えは示されないが、自己と宗教の付き合い方についてその作法を学ぶ資料として、アメリカという国の病んだ一面を知る資料として、また何かを盲信する事の恐ろしさについて興味深い作品だった。

   日本において宗教の話は話題として扱いにくいところがあるが、興味があったら是非手に取ってもらいたい作品でもある。
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