シュトルム凸映画鑑賞記録用改め

人情紙風船のシュトルム凸映画鑑賞記録用改めのレビュー・感想・評価

人情紙風船(1937年製作の映画)
3.9
ツタヤDISCASで試聴。
貧乏長屋の住人である海野又十郎は大身の侍毛利に亡父の縁で、恐らく仕官の口を頼み込むが袖にされ続ける。一方、同じ長屋の髪結新三は、闇賭場を開帳して、地元ヤクザに睨まれるが、屈服せず、遂には白子屋の令嬢の拐かし事件を起こして、仲裁に乗り出したヤクザの親分の面子を潰し鼻をあかす。
寡黙で真面目な浪人、海野が拐かし事件の片棒を図らずも担ぐことになり、新三から、令嬢の輿入れを取り持つ毛利が苦境に立って頭を下げたと聞いたとき、海野が毛利への憎しみを初めて自覚し、破顔一笑するのが何とも切なく胸を打つシーンである。
だが、結局サムライである海野は最後まで状況と戦わず、町人である新三がよほどサムライらしい生き様を見せる皮肉。ヤクザの親分弥太五郎源七相手に一歩も退かない新三の啖呵は惚れ惚れするような男っぷりで一見の価値がある。
冒頭で老武士の首吊り事件が興り、武士なら首をくくるのではなく腹を切ってみせろと揶揄されるが、海野の最期もまた、武士ではなく、図らずも町人的であった。町人の物語である人情噺を武士を主人公にして回すのが、切なさを増しているのであろうか。

追記 日本語作品ながら、字幕ON必須です。セリフの聞き取りではなく物語に集中できるようになる。