アベンジャーズから山中貞雄へ
我ながらすごい振り幅!
これぞ、知る人ぞ知る、彗星の如く現れ、去っていった若き天才映画作家山中貞雄代表作にして遺作!
20代で亡くなり、現存するフィルムはごく僅か。
ずっと撮り続けることができたら、小津、黒沢、溝口と並ぶ巨匠になっていたと言われる幻の作家。
高校生で見た時はその凄さが全く分からなかったけど、改めて観た今回、衝撃!を受けました!
脚本も、演出も、カメラも、テーマも、演技も全ての部分で最高級のクオリティー!
それが90分弱で全部詰め込んでいる!
すごい!凄過ぎる!
江戸の貧しい長屋。一人の浪人が首をくくったとたなご達が騒いでいる。
大家さんに供養の為、通夜で酒を出せと詰め寄るたなご達。
ここらへんの軽い会話はまるで、NHKの
「落語をドラマにするやつ」みたい。
軽い人情ものかと思って気軽に観ている観客に、ちょっとずつ主人公二人のエピソードを挟み込んで、ギュッと凝縮されていく、この巧みさ。
口八丁で長屋のリーダ的存在の新三は、賭博を開いて、地元のヤクザに追われている。
長屋に住む浪人、海野又十郎は仕官の口を探してるが、取り入っも貰えない。
そんなふたりの事情が雨の縁日に一気に加速する。
落語のような人情話がギリシア神話のように動き出す!
このギアーの切り替えの妙、数々の名画達が成し遂げてきた極み
この2人を演じる河原崎長十郎と中村翫右衞門の演技がまたすごい!多分歌舞伎で基礎ができている役者さんだからだと思う。
こんなに昔のフィルムなのに、セリフが聞き取りやすいこと!
長屋の長方形のフォルムに人物を有機的に配置する構図。
紙風船や傘の見せ方、物語が大きく動く雨のシーンを見せるまでのちょっとずつの天候の変化の描写。
もちろん。長屋の人々の会話、特に不適切な表現多発?の視覚障がい者の方のやりとり?などライトな部分もしっかり配慮されている。
そして、今までチラッとしか出されていなかった作品のテーマに集結していく。
2人の立場の違い。地位ってなんなんだろうって、いうところまで、持っていく
この虚無感、
映画がメビウスの輪のように最初と最後が繋がっていく!
これは、日本映画史上に残る一本ですよ!