結構コミカルで楽しい「丹下左膳余話 百万両の壺」を先に観ていたので、題名から人情喜劇だとばかり思っていたら、、、違った、、^^;
もし戦争で若くして亡くならなければ、戦後、黒澤明の良きライバルになっていただろうと言われる山中貞雄の現存する数少ない作品の一つ。
江戸時代の長屋が舞台の群像劇。いろんな訳ありの人々が暮らし、何かあるとみんなが細い路地に出てきて、ああだこうだ。
人々のやりとりが面白いのですが、笑いや泣きより、なんとも言えない無常感が漂います。世知辛い世の中、人情は紙風船のように、フワリとしてすぐに破れてしまう、、とでも言いたそう、、。
貧しい者たちの生き辛さは、江戸時代も今も変わらないのだと思う。
とても20代で作ったとは思えない老練さを感じます。
普遍的なドラマを見事な手腕で映画化したこの監督は、やはり才能豊かだったんだろうと思います。
これが遺作というのが、一番の哀しみと言えそうです。