フラハティ

変身のフラハティのレビュー・感想・評価

変身(2002年製作の映画)
3.4
カフカの『変身』の映画化。


映像化不可能とも言うべき作品のひとつだが、これだけは断言できる。本作以上に『変身』を見事に描くのは不可能。

『ある朝、グレゴールは気がかりな夢から目を覚ますと、一匹の巨大な虫に変身していた。』
原作に関して言えば、様々な解釈ができるようになっており、明確な解釈はない。
そのため、本作の解釈をどう観客に委ねるのか、制作者の意向はかなり重要。
そしてそれを上手くやってのけた。

カフカ的な解釈とかは、原作のコアなファンでもない僕はわからない。
そこまで社会派なメッセージはないとか、ほんとは笑い話だとかカフカは語ったらしいが、シンプルな題材から生まれる斬新さはやっぱりメッセージがないわけないと思うんだけどなあ。


本作に関して言えば、夢の表現がなされているが、この表現が詩的で文学っぽい。
原作をそのままなぞり、"虫"であるグレゴールの視点で物語は進んでいく。
だがグレゴールが語ることはほとんどない。
だがその視線から、家族の扱いから、グレゴールの感情は見えてくる。
本作の一番の良さは"虫"になったグレゴールの姿。

不条理な世の中。
真面目に仕事に励んでいた男。
突然虫になり、いつしか厄介者になってしまう。
家族のために尽くしたのに、姿が変わるだけでなぜこんな扱いにされてしまうのか。


原作のコンセプトはそのままに、味付けはほとんどしない。
だが映画として魅せることも忘れない。
演出は笑えてしまうような部分もあるが、カフカが笑い話と言っていたらしいのでそういった旨を表現としても駆使したのか。
それともただ単に、舞台的な表現にしたかったからか。
どっちにしてもバランスがいい。
シリアスでもあり、若干コメディでもある。

映像化不可能な題材を見事に映像化したが、これは映画としての評価は難しいな。
全然観て損はないし、原作が好きなら余計観て欲しいとも思う。
でもただ原作をなぞらえただけではあるので、物足りなさもあったりする。


変身したのはグレゴールか。
それとも家族か。