滝和也

華麗なる賭けの滝和也のレビュー・感想・評価

華麗なる賭け(1968年製作の映画)
3.8
満ちたりし心とは
如何なるものか…。

マックイーン&ノーマンの
シンシナティキッドの
コンビが再び送る
洒落たピカレスクロマン。

「華麗なる賭け」

ボストンの大銀行が5人の男に襲撃される。証拠ひとつ残さない鮮やかな手口に警察はお手上げとなる。高らかに笑う主犯、トーマス(スティーブ・マックイーン)。彼は大富豪の実業家でありながら、心の隙間を埋めるべく、完全犯罪を実行していた。銀行に対し保険金を払った保険会社は捜査が進まぬ警察に対し、独自に保険調査員ビッキー(フェイ・ダナウェイ)を送り込み協力し始める。凄腕の彼女は間もなく犯罪の構造を見抜き、トーマスにあたりを付け、接近して行くが…。

スティーブ・マックイーンのクールさと渋さが完全犯罪者の大富豪と言う役柄に意外に似合い、楽しめますね。今作では知能犯と言う役どころのため、彼のアクションはないのですが、その余裕ある態度、微笑みが本心を悟らせない不思議な存在にマッチしています。正体を証し、犯人と決めつけ接近してくるダナウェイと緊張感のある不思議な距離を作り出しています。恋仲にもみえるし、遊びにも見えると言う緊張感。犯罪者と正義の緊張感。その演技と演出がそのラインを曖昧にし、物語を最後まで引っ張ります。

ヒロイン、ダナウェイは正に乗っていた時期ですね。俺たちに明日はないの後でしょうか。自立し、色仕掛やギリギリの手を使っても仕事を全うしようとする現代的な女性役が似合います。コケティッシュな魅力も備え、ファッショナブルでもあるそれはあたり役だと思われます。あらゆる手でマックイーンを揺さぶってくる悪女であり聖女ですし…。

また監督ノーマン・ジュイソンはシンシナティキッドでマックイーンと組み、その後、夜の大捜査線でアカデミーに耀いたエンタメ要素を持つ技工派職人監督。今作では分割画面を巧みに使用し、襲撃シーン他、サスペンスを盛り上げて行きます。また音楽がどこかフレンチの香りがする洒落た感じで、演出含めて欧州映画の雰囲気があり、ヌーヴェルヴァーグに影響された感じなんですよ。それと黄金の七人を思い出させて(^^) 良い感じなんですね。中でも二人のチェスシーンがラブシーンに匹敵する様な演出でよく出来てました。アップで交互に映る手や表情がエロティックで伝わるんですよね…(^^)正に職人の仕事でした。

ラストは…色んな見方ができるのかな。どこまでもマックイーンはクールでカッコイイんですけどね(^^) 

その紙が舞う寂寥感と反体制の犯罪者が主役という点から、私の中ではこちらも一応アメリカンニューシネマに分類してます(^^) マックイーンとフェイ・ダナウェイの大人の掛け合いが素晴らしいですので是非ご覧いただければ。マックイーンの作品としては王道から外れますが楽しめる作品ですので(^^)

追記 因みにアクションがないとしましたが、マックイーンがサンドバギーを砂浜でブッ飛ばすシーンがあります。レーサーでもあった彼の面目躍如のシーンです(^^)
滝和也

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