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ザ・ロードのshingoのレビュー・感想・評価

ザ・ロード(2009年製作の映画)
2.8
舞台は近未来のどこかで、おそらく核兵器か何かで崩壊した世界。作中では何一つ具体的な説明が無いので鑑賞者は想像に身を委ねるしかない。この崩壊した世界を名前すら出てこない父と幼い息子がただ南を目指し旅をするという、どこまでも説明不足なロードムービー。

原作はコーマック・マッカーシー 。彼の映画化作品はコーエン兄弟の「ノー・カントリー」にしろ、ジェームズ・フランコの「チャイルド・オブ・ゴッド」にしろ、どれも人の道を踏み外した異常者を描いている。だが本作でジョン・ヒルコートが描くのは異常者と言うよりは異常な世界。木々は枯れ、食糧は殆ど残っておらず、生き残った人間は飢えて野蛮人と化した者たちが出没するという、完全に世紀末のような世界である。

そんな世界で幼い息子を守るために人間性を捨てようとする父親と、そんな世界でも困ってる人を見捨てられない天使のような息子との対比が印象的。この極限状態の世界でどれだけ人は人であることを保てるかというのが本作のテーマなのだろう。途中何度か出てくる、世界が崩壊する前の色彩豊かなフラッシュバックも崩壊後の灰色の世界とのコントラストを高め、それぞれの世界を際立たせている。

ただこの作品、特に悪い要素が目立つという訳ではないのだが決して特別面白いという訳でもない。盛り上がりや起伏に欠け、淡々とした親子の旅が延々と続くだけ。それでも残酷な世界の中で、ラストだけは僅かな希望を残す。個人的には隠れた名作と思ってるが正直どうなんだろう。
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