【帰らざる我らが日々】
海兵隊員のカンは、夜の浜辺で不審な人影を発見。工作員が潜入したと思い込み発砲するが、誤って民間人を射殺してしまう…。
キム・ギドクが描く苦しいヒューマンドラマ。一度の過ちから人生を大きく狂わせてしまった若き兵士を中心に映す本作は非常に胸が苦しい映画となっていた。
そもそもキム・ギドクは人の転落や崩壊を描くのに長けている監督であり、本作は95分という短尺ながらしっかりとその部分を捉えていた。個人的には次作の『受取人不明』ほどのインパクトや『弓』などのギドク特有の神秘さは欠けていたが、十分満足できた一作である。
チャン・ドンゴンの徐々に理性を失い、人間ではなくなっていく演技力は流石のもの。彼なしではもちろん完成させられなかった作品であり、改めて38度線という存在自体が人間を苦しませ狂わせるのだなとも思った。
希望すら抱かせない。救いようがない。
そんな映画。