湯っ子

がんばれ!ベアーズの湯っ子のレビュー・感想・評価

がんばれ!ベアーズ(1976年製作の映画)
3.9
ハチャメチャでドタバタなコメディなのに、なぜかとてもリアルを感じるという不思議な映画だった。
主人公は飲んだくれの監督でもあるし、個性豊かな子供たちでもある。弱小チームに、昔はそれなりに活躍していたけど今はちょっと(だいぶ)落ちぶれたおっさんが監督としてやってくる、という今ではお決まりのパターンのお話なんだけど、この監督はダメ男から劇的に変化するわけではない。子供たちにはちょっとした成長は認められるものの、終始ガチャガチャとうるさい。しかし、それが良い。あるチームのあるシーズンを切り取ったスケッチのような印象を受けた。

この飲んだくれ監督、勝ちにこだわって、どう考えてもスポーツマンシップに反する指示を出すかと思えば、相手チームの監督の選手の扱いのひどさを目の当たりにしたら我に帰ったのか、急にまた「全員野球だ!」とか言い出したりする。
でも、なんか人間くさくていいじゃないですか。感動もの、スポ根ものの形におさめようとしてないこの雑さというかおおらかさが私には好ましかった。

ちなみに、このおっさんは練習中も試合中もビールを手離さず、チームの子にマティーニ作らせたり癇癪起こして子供にビール缶を投げつけたりするので、現代では全くのアウトである。せっかく面白いのに地上波での放映は絶対に無理であろう。

ぼんやりした記憶だけど、私が小学生くらいの頃はまだまだこういうのは許されてたから、テレビで観て、普通にコメディとして楽しんだ記憶もある。こうして改めて大人になって、さらに息子たちの少年野球を見届けてから本作を観ると、日米を越えたあるあるがたくさんで面白かった。
決勝の相手チームのピッチャーはおそらく監督の息子。ボランティアでやってる指導者っていうのは、ボランティアだからこそ権力を持っていて、自分の好きなように選手を采配できたりする。で、うまくいかないと自分の子どもだから遠慮なく当たり散らす。そんな場面をたくさん見てきた。誰を使うとか使わないとか、子供そっちのけで親が揉めたりもしたもんだ。試合に負けたら親のほうばっかりいつまでも悔しがってるのに、子供たちはすぐにケロッとして、このあとザリガニ釣りに行く?とか相談してたり。今となっては懐かしい思い出ですけどね。

ちょっと消化不良なのは、飲んだくれ監督と元恋人の娘テイタム・オニールとのエピソード。彼女はすごいピッチャーで、どうやら昔、監督から投球を教えられたらしい。娘は母親と監督の再縁を望んでいたり、監督を慕っているらしく、その気持ちをアピールするが、監督は拒絶する。「そうしたいのはやまやまだけど、大人はそう簡単にいかないんだよ」ってことなんだろうけど、その表現が「見えないところで涙」。しかも目薬感ありあり。これはさすがに雑すぎたかな。

テイタム・オニールとのエピソードをのぞいては、雑さをおおらかさととらえて観るなら文句なく楽しめる。クソガキがたくさん出てくるのもいい。私のお気に入りは、小さくて弱いくせにケンカっ早いタナー。クソガキが出てくるのは良い映画だ。
湯っ子

湯っ子