全編に渡ってビゼーの「カルメン」が鳴り響く楽しいスポーツ・コメディ。
元マイナーリーグの選手で今では飲んだくれのプール掃除人(ウォルター・マッソー)が、結成したばかりの少年野球チーム「ベアーズ」のコーチに就任する。
というのも、ある市会議員の父親が自分の息子に野球をさせたいのだがこの子が下手っぴでどこのチームにも入れない。
急遽編成した野球チームがこのベアーズなのだが、これが寄せ集めのどうしようもないメンバーばかり。
白羽の矢が当たったウォルター・マッソーも少年たちのあまりのダメっぷりに頭を抱える始末。
初戦ではヴィク・モロー率いる強豪チームにボコボコにされてしまう。議員はさっさとチームを解散しようと言い出すが、マッソーはかえって闘志が燃え始めた。
マッソーはチームの立て直しをはかるため、ある二人の少年少女のもとを訪れる。
昔の同棲相手の娘テイタム・オニールと町の不良少年ジャッキー・アール・へイリーだ。二人とも抜群の野球センスの持ち主だが、興味がないと言ってマッソーの誘いを断るのだった。
飲んだくれの元野球選手って役柄がこれほどピッタリの役者もいない。マッソーって人は本当にいい味を出してくれる。
ただ本作の真の主人公は子どもたち。
「ペーパー・ムーン」の時よりも大人びた(そして相変わらずこまっちゃくれた)テイタム・オニールの可愛らしさ。
一匹狼なんだけど実はどっかさびしがり屋でもあるジャッキー・アール・へイリー。
そして横柄な大食い、データに強いメガネ、喧嘩早いチビ、弱虫の議員の息子などなど、個性豊かな子どもたちを率いて、ベアーズはどんどん勝ち進んでいく。
やがて初戦で苦渋を飲まされた相手であるヴィク・モローのチームと再び対戦する。
本作が単なるコメディで終わらなかったのは、このクライマックスの試合シーンである。
熱戦の最中、大人たちは段々と選手のことを置いてきぼりにして、我を忘れて勝つことしか眼中になくなる。両チームの子どもたちは大人に対して冷めて見るようになる。
スポーツは所詮は勝ち負けなんだけど、勝つことがすべてではない。
果たしてマッソーとモローはそのことに気付くことが出来るのか?
ここが本作の見所であります。
■映画 DATA==========================
監督:マイケル・リッチー
脚本:ビル・ランカスター
製作:スタンリー・R・ジャッフェ
音楽:ジェリー・フィールディング
撮影:ジョン・A・アロンゾ
公開:1976年4月7日(米)/1976年12月4日(日)