滝和也

昭和残侠伝の滝和也のレビュー・感想・評価

昭和残侠伝(1965年製作の映画)
3.9
背中で泣いてる
唐獅子牡丹

渡世の義理も人情も
怒りに変えて、
悪鬼羅刹の元へと
白刃下げての
二人旅。

「昭和残侠伝」

日本を代表する俳優、高倉健の東映任侠ものとしての最高傑作として名高いシリーズ第一作。

悪鬼羅刹の如き、敵に対して渡世の義理から我慢を重ねる高倉健。その怒りの封が切れた時に始まる、過去例に見ない、屈指の名シーンとして名高い、高倉健と池部良による「道行き」からの怒りを爆発させる殴り込みシーンのカタルシス。正に東映ヤクザものの様式美を極めし作品です。

第一作にしてこの基本的なフォーマットはすでに固まっております。故に高倉健人気が爆発。この後、8作品が作られてますね。所謂我慢劇と呼ばれるジャンルであり、ある意味赤穂浪士もこれになるのかな。日本人の琴線に触れるようなつくりなんですよね。

今作はまだ初回作品と言うことで熟れていない部分もありますが、その新シリーズを作ってやろうと言う気概が各所で見て取れます。まずは生きのいい若手の起用。仁義なき戦いシリーズでは中核を成した梅宮辰夫、松方弘樹が健さんの舎弟としてかなり目立つ役で登場。松方弘樹はラストの殴り込みにも登場しますからね。(これ以後は確かないと思います。)ストーリーも組同士のショ場争いですが、マーケット炎上シーンなどダイナミックなものも用意されてます。

またヒロインは三田佳子様。好き会いながら、戦争で離れ友人と一緒になった健さんの想い人役。慎ましやかな役で目立ちませんが男臭い作品の良いアクセントになってます。

この作品のみが戦後すぐを舞台にしており、故に池部良演じる風間重吉が拳銃使いだったり、ラストの殴り込みでは手榴弾も出てきます。また重吉さんのご同道願いますのセリフも違い、やや軽かったり、現代的。ただ彼が仁義を切る長ゼリフのシーンは見事にキマってますし、様式美が出るシーンでした(^^)

ただ健さんと池部良の直接の関係がやや薄く、共通の敵にラスト向かう感じなのは、まだ脚本、演出ともに熟れていない点かなと思います。とはいえ、不器用で義理人情に厚いヒーロー高倉健とニヒルで虚無感すら感じるクールな池部良の魅力が見事に伝わる素晴らしい作品に仕上がっています。

私の中ではこのシリーズ甲乙付けがたい作品ばかりなのですが、七作目の死んで貰いますが完成形で最高傑作として既にレビュー済み。もしよろしければそちらも見てください(^^)

追記 健さんの舎弟の中にウルトラセブンのキリヤマ隊長がいたり、コメディリリーフで仮面ライダーの地獄大使こと潮健児さんが登場していますので特撮ファンにも楽しめますよ(^^)
滝和也

滝和也