垂直落下式サミング

昭和残侠伝の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

昭和残侠伝(1965年製作の映画)
3.7
まっすぐ生きている善玉が悪党に踏みにじられるのを耐えに耐えて、我慢に我慢を重ねた末、高倉健が単身殴りこみに出で立つ。静かに歩む健さんだけにライトが当たり、主題歌が流れる。一番が終ったところで、池辺良が待っている。「あっしもお供させていただきやす」と、ふたり横並びとなって男が歩む。暗闇のなかを進むふたりをスポットライトが追いかける。この場面を堪能できれば、もうそれでいい。そういう映画だということだ。
松方弘樹が坊っちゃん面!梅宮辰夫が痩せている!など今になって見所は多いが、この映画が公開された5~6年後には、ここに描かれている価値観が通用しなくなり、人の義侠心を迷いなく描くことができなくなってしまったという事実に目を転じてみることで、今にこそ通じるものがあると思う。
私は、70年代の東映実録やくざ路線よりも、このような任侠作品にこそ今一度光をあて立ち返るべきだと思うが、『仁義なき戦い』よりも古くさいものを復刻させたところで流行らないんだろうな。仁義は死んでしまった。そんなわけで、これからも大切していきたい映画だ。