千年女優

それでもボクはやってないの千年女優のレビュー・感想・評価

それでもボクはやってない(2007年製作の映画)
4.5
定職をもたないフリーターで、先輩から紹介された会社への就職面接に向かうためにラッシュで混雑する電車に乗り込んだ金子徹平。目の前に乗車していた女子中学生からの痴漢の嫌疑で逮捕され自白を求められるも一貫して無実を主張する彼が、有罪率99.9%と言われる刑事裁判へ弁護士や協力者と共に臨む様を描いた周防正行監督作品です。

それまでの老若男女に愛される上品な大衆娯楽映画の路線から一変しての社会派となった周防監督映画で、地裁の有罪判決から一転して高裁では無罪となった痴漢事件の西武新宿線第1事件を始め、様々な冤罪事件の実例から起訴による有罪率99%超の実態(逮捕からの有罪率は6~7割)といった日本の刑事事件における問題を浮き彫りにします。

自白中心主義にも関わらず不透明な警察の取り調べや長すぎる勾留期間といった司法の実態を突きつけて否応なしに問題意識を呼び起こす展開を多くの人の関心を集める裾野の広い題材を用いて語っていて、犯罪に対して感じる卑劣さとは裏腹の神のみぞ知る真実を他人が推測で裁くことの無謀とやるせなさを突きつける一級の社会派映画です。
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