タスマニア

それでもボクはやってないのタスマニアのレビュー・感想・評価

それでもボクはやってない(2007年製作の映画)
4.0
約10年前、高校生だった自分に軽い電車恐怖症を植えつけたこの作品。
真面目に勉強頑張って、立派な大人になって、ようやく社会に認められるようになっても、たった一回乗り合わせた運ゲーのようなアクシンデントで社会的に殺されるんだという事実がショッキングすぎた。

そして、引越しにより電車通勤から解放された今もう一度見てみることに。

終始淡々と進んでいく裁判の流れは、"刑事裁判の進め方" 教材ビデオのよう。民事裁判と刑事裁判の違いの説明や、裁判における歪んだ常識や実情を半ば自虐的に説明するシーンなどからも、この一連の冤罪事件を描くことよりも、現在の日本における司法の実情を伝えることが全てのような気がする。

一連の手続きめいたやりとりや、本質でない結果の本質を見極めることに全力を注ぐ国家権力の集まりに嫌悪感すら抱き、もやもやを最高に貯めるという意味でこれ以上の作品はそうそうない。

痴漢も痴漢冤罪も最低最悪、被害者は勇気を出して声を上げなければならない、でも冤罪は生んではいけない。
そう考えると、やったやらなかったを明らかにする精度を高めるよりも、やったやらなかった議論になり得る状況も絶対に起こりえないようにする。
つまり、誰も電車に乗らない。互いに親しくない男女は1メートル以上距離を取る。といった性悪説に則った極端な方法しか取れないと思い、ある時自分は考えるのをやめた。

あー、モヤモヤするわ。

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